基底関数(basis set)

ab initio計算では、基底関数(basis set)と呼ばれる各原子の挙動を指定した関数を指定する必要があります。基底関数は計算の精密さを決定します。
通常の有機化合物であれば基底関数に6-31G*を用いれば十分だそうです
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STO3G
電子の挙動を3個のガウス関数で表したab initio計算における絶対最小基底関数です。炭化水素分子の幾何構造の予測には有効といわれております。 STO4G, STO5Gという基底関数も知られておりますが、計算にかかるコストの割に計算精度はあまり高くならないことから、これらはほとんど使われません。
STO3Gでは、水素、リチウム、ホウ素、炭素など周期表の左側に位置する価電子の少ない原子では良い一致を示しますが、酸素やフッ素など周期表の価電子の右に位置する原子を持つ分子では誤差が大きくなります。(求められる幾何構造は結果論としてよい再現性を示すのであって、分子軌道の再現性によるものではないといわれております。従って、分子軌道に基づく物性、スペクトルの予想には適切ではありません。)
未考慮の空軌道となっている外殻電子軌道の与える影響が無視できなくなるためです。
考慮される軌道は1s, 2s, および2p軌道ですが、第4周期、第5周期の原子が入った臭化メチル、よう化メチルをSpartanで実験したところ一応正常に終了しました。
3-21, 6-31G, 6-311+G
原子殻二倍基底関数系(split valence double zeta basis set)と呼ばれる基底関数で、最初の数字は内殻原子軌道を表すガウス関数の数をハイフン後の数字は、原子価軌道を表すガウス関数の種類と数を示します。
3-21Gは内殻軌道を3個のガウス関数、原子価軌道を内側と外側とで2個と1個のガウス関数に分けて表現しています。6-31Gは、内殻軌道を6個のガウス関数として、原子価軌道を内側と外側とでそれぞれ3個と1個のガウス関数として分けて表現していることを示します。
表していることを意味します。6-311Gの場合、内殻軌道が6個のガウス関数で表現されることに変わりませんが、価電子軌道を三つの部分(3個と1個と1個のガウス関数)に分けて表現することを意味します。後者ほどより精密な計算になりますが、必要な計算時間、メモリサイズも増大します。
3-21G*, 6-31G*, 6-31G**
上記基底関数では、分極したd-軌道の表現に不十分なところがありました。重原子(水素、ヘリウム以外の原子)に分極関数と呼ばれる方法を導入して改善した基底関数群です。たとえば基底関数6-31G*は6-31Gに分極関数導入した基底関数を意味します。6-31G**は、さらに水素とヘリウムに分極関数を導入した基底関数で、第三周期のd軌道を含む分子の再現性に優れているといわれています。6-31G*は6-31G(d)と表現することもあります。
6-31G*、6-311++G*
アニオンやカチオンなど電荷の局在化の大きい分子を取り扱うことが出来る様に高速拡散関数を導入した基底関数です。6-31+G*は、6-31G*基底系に重原子を対象とした1組の拡散ガウス関数を追加しています。6-311++G**では、さらに水素原子にまで拡散ガウス関数を追加ています。